ジェファーソンからの手紙

就業・働き方改革、キャリア、組織マネジメント、IT、政治、社会、文化などについて徒然に書きます

【『英霊』の気持ちの簡易考察】お前はこの国をどうしたいんだ

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 毎年、日本古来のお盆にあたる、7月13日~7月16日に「みたままつり」が行われます。

人それぞれ靖国神社に対する思いはありましょうが、靖国の存在理由とは別に、露店が並ぶ夏の夜の風景は東京の風物詩とも言えました。

 

しかし、2015年から露店が中止されました。

理由はナンパする人が多いからともいわれています。

2015年と言えば戦後70年で、安保法制の議論が熱を帯びた時期でもあります。

 

後世で本人の知らぬ内に「英霊」と呼ばれた海軍将校の御霊とネトウヨの邂逅を通じて当時の風景を物語にしてみました。

 

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『けしからん!実にけしからん!』 
心の中で叫びながら靖国を歩く彼は、ネット界隈のごく一部では「名うての論客」と目される男。 


もっとも、世の中の大半は彼を知らず、ネットの狭い世界で彼を知る『ごく一部「以外」』からは 「出たよ!例のネトウヨ」と言われるのだが、本人は『愚民どもは真実を理解できない!』 と心の中で叫ぶ。 

今日もスマホSNSチェック。 
『全く!真実を知らない愚民がマスゴミに騙されている。ネットで調べた真実をコピペしてやるか。えい!(コメントが反映されました)』 

ドスン・・通行人にぶつかる。祭りの中、歩きスマホしてれば当然だ。 
「歩きスマホあぶねえだろ!」 
「あ、はい・・す・・すいぁせん」 

心の中で叫ばないときの彼の声は弱々しくドモリ気味。 

今年36歳の無職。 

彼が愛する国から『ニートの称号』すら年齢制限で剥奪された生粋の無職にして、 ネット界隈のごく一部では『名うての論客」』

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ふと彼が視線を送った先には軍服を着た男。 
軍人も彼と目が合う。 

【軍人】「なんだ!貴様わしが見えるのか?」 
【彼】「ひっ・・なんですか?」 

【軍人】「ほほう、やはり見えるようだ。わしは元大日本帝国海軍の少佐。昭和二十年、洋上で戦死したもの。70年に一度下界に戻れるというので来てみたのだ。」 
【彼】「おおおお!なんということ!愛国者としてあなたのような方に会えてうれしい限りでございます!ぜひこの国の腐った現実を聞いてください」 

【軍人】「なんだというのだ?わが日本が敗戦したことは聞いておるが、そんなにひどいことになっているのか?」 
【彼】「はい!まず見てください。あの若者どもを!英霊の前でナンパなどという女漁りに目がくらんでいます」 

【軍人】「それは何がいかんのだ?わしも女房は夏祭りで口説いた。男と女が愛し合い、結婚して子供を産み国家が栄える。いいことではないか。そもそも若者というけどお前もまだ若いのではないか?何歳だ?」 
【彼】「えと・・さ・・36です」 

【軍人】「なんと?わしとあまり変わらんではないか?なんだその情けない喋り方と貧相な顔は?男の生き様は顔に表れる。お前仕事は何をしているのだ?」 
【彼】「む・・無職です」 

【軍人】「なんと?どこか体でも悪いのか?」 
【彼】「い・・いえ、日本の企業はどこも学歴フィルターでしか人を見れない無能ばかりだし、バブル期の腐った老害が居座っていて、それにブラック企業しかないし、経団連の連中は内部留保をため込むことだけしか考えない奴らで・・」 

【軍人】「何をごちゃごちゃとわけのわからないことを!要するに言い訳だけしてるのだろうが!」 
【彼】「え・・えとえと・・あ、少佐!あれをご覧ください!あれぞ非国民です!」 

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【軍人】「なんだ?」 
【彼】「あれは、ヘイトスピーチに反対する連中です」 

【軍人】「なんだ?それは?」 
【彼】「悪しき在日朝鮮人の悪行を暴き糾弾する同志が「在日朝鮮人は出ていけ」と当たり前のことを言うだけなのに、それを批判する非国民です」 

【軍人】「(軍刀を抜きだす)ふざけるな貴様!」 
【彼】「ひ・・ひっ!なんですか?」 

【軍人】「朝鮮半島の人々も我等も同じ天皇の赤子にして日本国の臣民。我らが同胞を貴様は出て行けとぬかすか!」 
【彼】「ひっ!だだ・・だって彼らは反日ですよ!」 

【軍人】「まだいうか!我等は皆、八紘一宇の基に平和のうちに共存すべき同胞!貴様は獅子身中の虫か?」 
【彼】「ちょっと落ち着いてください。あ、あれ!あれこそ非国民です」 

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【軍人】「なんだ?」 
【彼】「あれは靖国A級戦犯の合祀を批判する連中の集まりです!大恩ある先人を愚弄する連中です」 

【軍人】「A級戦犯というのは聞いたことある。どういうことだ?」 
【彼】「あれはですね!東條閣下のような英雄を批判する非国民です。閣下のような英雄がいたから今の日本があるのにです!」 

【軍人】「ふむ?ここだけの話、わしは東條閣下は戦線を収束できず、なし崩しに拡大した責を国民には何か言うべきだとは思うがのう。閣下はお前の中では英雄なのか?」 
【彼】「あ・・えとえと、そうそう! 松岡洋右外務大臣もいます!あのような欧米に対して堂々と日本の主張を宣言した英雄をですね・・」 

【軍人】「(顔色が変わり軍刀を振りかぶる)・・・貴様!松岡大臣こそ、何の目算もなく独断で勝手に国連相手に喧嘩を売り、戦線拡大の風呂敷を広げ畳むこともしなかった男!何が英雄だ!あれと我ら軍人を同列に扱うか?!」 
【彼】「ちょっ・・ちょっと、あいたいた!あれです!あれこそ非国民」 

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【軍人】「今度はなんだ?」 
【彼】「あれはですね、集団的自衛権反対のデモです!軍人の誇りを愚弄する非国民です」 

【軍人】「その集団的自衛権というのは何だ?」 
【彼】「アメリカの軍が襲われたときに、我が国の危機とみなし共に戦う権利です!同盟国の危機を知らんぷりしようとする・・」 

【軍人】「(軍刀で切り付ける)貴様!いい加減にしろ!」 
【彼】「なんなんですか今度は!」 

【軍人】「敵国米国が襲われたから助ける権利だ?」 
【彼】「ひっ!今は時代が違い同盟国・・」 

【軍人】「黙れ!そもそも、我が国の軍は我が国のために戦うもの!米国のための戦争は我が国に何の利があるというのだ?!」 
【彼】「ひっ!アメリカを味方につければ、あのクズの朝鮮・中国の連中と戦争したときにあいつら皆殺しに・・」 

【軍人】「まだいうか!何が皆殺しだ!我ら軍人が闘う相手は敵国政府であり軍人であり、国民ではない!貴様は軍人を愚弄するのか?しかもそのために米国に尻尾振れだと?貴様はこの国をどこに持っていこうとしているんだ?!(切りつける)」 
【彼】「ひゃっ!・・・もう勘弁してください(逃げ出す)」 

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少佐は一人残され、彼の姿を見えない多くの若者の姿を遠目に見ながらつぶやく。 

「まったく・・・我ら皆、帝国軍人は帝国の平和のために戦っていたはず。しかるに、戦争が終わった後にあのような、自ら争うことを好む馬鹿が育つとは。

ここでナンパとやらに励む若僧どもが平和に暮らせる世こそが我らの望んだものではないのか? 

軍人の存在意義とは、軍人なくとも済む世の中のためにあるものであり、軍人が存在意義を見つけるために戦う理由を探すものではない。 


なぜあの馬鹿にはそれが理解できないのか。あいつはこの国をどうしたいんだ?どうして日本はこうなったんだ?やれやれ・・・」