【サービス残業の簡易考察】サービス残業させたい上司のマニュアル
由緒正しきブラック企業で働く管理職の皆様としては、サービス残業の強制は管理職の王道。避けては通れない道であり、基本です。
やがては、ブラック上司としてセクハラ・パワハラ・モラハラ・マタハラと、毎日部下をハラハラさせ、やがては自分が労基署に問い詰められ、管理責任を問われたくない経営層からはトカゲの尻尾切りされて自分がハラハラする日々を送る上司になると思います。
まずは基本である「サービス残業の強要」に関してみていきましょう。
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「3つのサビ残正当化理論」というものが世の中にはあります。
①「仕事はやりがい理論」
【お客様が喜ぶ顔を思えば金なんか関係なくなるよな。俺たちは金のためではなく人の幸せのために働いているんだ】
⇒イケテませんね。
金とヤリ甲斐は二択ではないですね。
なんでそんなトレードオフになるのでしょう?
誰でもそう突っ込みますし、突っ込まれて反論できませんね。
「じゃあお前、ヤリガイと引き換えで無給で働くのか?」と言われたらグウの音も出ませんね。
そもそも「労働の対価としての賃金払い」と言う概念が労基法読むまでもない自明の話です。
②「残業が発生するのは仕事が遅いからだ理論」
【もしそれで残業代を君あげてしまうと仕事が遅い人が得してしまうだろ? だから払えないんだ】
⇒少し現代的ですね。
「時間ではなく成果で報酬を払うべき」と言うのは、ホワイトカラーが増えてきた20世紀の終盤から流行の発想です。
でもですね、そもそも「その作業が定時で終るという見積もり」の妥当性はすぐ露見します。
「その会社の標準的な従業員の能力で職務遂行して定時内で終るのが妥当か」と言う発想で検証すればすぐに、「見積もりの方がおかしくない?」と突っ込まれます。
それ以前の話で、余程会社側が
「お前絶対に定時で帰れ、仕事終わってなくても関係ない」と言う業務命令出しているとか
「誰が見ても客観的に、意図的に作業遅延させて残業代稼ぎしている」が証明できるとか
でない限りは、仕事が少々遅かったとしてもそれで残業代不払いの理由になりません。
③「金は後からついてくる理論」」
【まずは金のことを考えずにがむしゃらに働き、自分の能力をアピールすれば、いずれ「それ相応の給料になる」】
⇒後じゃなくて今払え。
というか、基本給や賞与が上がることと、今行った残業代が払われないことの相関関係は無いです。
秒殺で突っ込まれて終わりです。
このような「本来払われるべき残業代」の不払いは純然たる会社側の債務です。
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というかですね、このように「残業代払わないことの正当化」なんて上司が自分から言ってはダメです。
今の時代、超小型のICレコーダが普通に廉価で売ってます。
こんなもん録音されて労基にもっていかれたら見事な「残業代不払い」の証拠です。
意図的な不払いは罰則付きの労基法違反です。
まして、メールなんかで証拠残すなど以ての外。
皆さん「労基署は何も動かない」等と言うネット情報を鵜呑みにしちゃだめです。
あの人たち、すごい働きます。
ただ、人が少なくて手が回らないだけです。
凄い分かりやすい労基法違反の証拠なんかあったら、検挙数増加のために喜んで臨検に来ちゃいますよ。
ちなみに、意外と知られてないですが、労基署にいる労働基準監督官って司法警察官です。
簡単に言えば警察同様の立場です。労基署の「署」は警察署の「署」。
本気で監督官が来ると、警察同様のガサ入れされますよ。
由緒正しきブラック企業の「できるブラック上司」たるもの、
サビ残強要もスマートかつ、法に触れなさそうで結局触れるグレーゾーンを歩まないといけません。
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出来るブラック上司のサビ残強要術とはずばり以下2点です。
【従業員が自主的にサービス残業をするように仕向ける】
【上司は「知らなかった」と言い張れる状況を作る】
そのためにはどうすればいいのでしょう。
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【1】「この作業をこの期間で終わらせろ」以上の指示は言わない。
はい、鉄則です。上記が部下の義務です。
残業しようがしまいが関係ないのです。
「残業しろ」ではなく「タスクを期限に終わらせろ」これがオーダーであり、
いざと言うときは「まさか残業するとは」とトボケることです。
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【2】「残業は悪である」と言う姿勢を前面に出し、会社的に「残業は評価が低くなる」と言うことを伝える
はい、間違っても「何一人だけ先に帰ってるんだ」等、残業が美徳であるというようなことを口走ってはいけません。
「早く終われば早く帰る。ワークライフバランスを大事にするのが評価高い」くらいの大見得を切るのです。
その際、「金の話」をしてるのか「作業の速さや効率化のスキル」の話をしているのか「健康上の労務管理」の話をしているのかを曖昧にしないといけません。
「金の話」を明文化していると後から「会社から残業代削減のためにサービス残業を強制された」と問題になります。
間違っても残業代削減の強要などメールで書いちゃだめですよ。
労基署にかけ込まれます。
金の話を「暗に」しながら表向きは
「効率化やライフワークバランスを考えずに残業で解決しようとする人は評価低くなるんだ。でもこれは従業員の事を考えてのことだ。残業で解決するのは昭和の発想だよ、よくない」
的なことを明文化しておきましょう。
あと、「サービス残業はダメだ。我が社はコンプライアンス遵守だ」と言うのも明文化しておくとさらにポイント高いです。
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【3】「お前、上からも良く思われてないしこの辺で評価挙げておかないとヤバイよ。今転職も厳しいぞ」と不安にさせながら自分は味方だと装う
そもそも、サービス残業をさせるのは何故でしょう?
勿論、作業工数と予算の見積もりミスで、そのつもりが全くなかったのに、残業は発生するわ原資が無いわということもあるでしょう。
でも、それは二流のブラック上司のすることです。
一流のブラック上司たる者「正しく見積もり正しくサビ残させる」です。
商売の基本は、売り上げを多くして費用を下げることで利益を増やすことです。
一流のブラック上司たる者「正しくサービス残業前提での工数を見積もり、正しく残業代を払わない」ことで、生産量(売上)をあげ、残業代(費用)を下げ、価格競争力を得るのです。
その際、こういう部下がいると困りますね
「仕事ができ、頭が良く、自分に自信があり、状況判断ができる部下」
エース級の部下ですね。
こういう人、自分が搾取されていることをよくわかっています。
自分がもっと高値で転職できる市場価値があることもわかります。
逃げられるかまたは労基に駈け込まれます。
そんなことされて問題になり、上に知られたら貴方の立場がヤバくなります。
それを避けるためには部下にこう思わせることです。
「俺、評価低いんだ。これ以上評価さげちゃやばいんだ。この上司にまで嫌われると会社に居づらくなる。でも、転職も厳しそうだし、転職できたとしても更に給料下がるんだろうなぁ」
こう思った部下は【1】【2】と併せてこう思うはずです。
「俺、仕事は言われた期限内にやらないとヤバイ。でも、残業付けるとそれはそれで評価が下がるんでヤバイ。でも、サービス残業しますと上司に言うと更に評価下がる」
はい、自主的にサービス残業する部下の完成です。
上司はなるべく早く帰りましょう。
自主的に部下がサービス残業してくれます。
しかも、わざわざ上司の目を盗んでサービス残業しようなんて思ったりします。
そうそう、可能であれば
「俺、同業に顔が広いんだ」的なことを吹き込んでおくとポイント高いです。
本当に顔が広いとか関係ありません。そんなことまずバレません。
そう思わせるだけで、
「転職しようにも敵に回すと同業に色々吹き込まれて、この業界で生きていけなくなる」
と思わせることが出来ます。
見事な社畜の完成です。
こういう社畜が何人かいると、部下同士で勝手に
『あいつこの忙しい中、先帰ってるんだよ』
『あいつ残業代つけようとしてるぜ』
などと、相互監視しあい、あなたが知らないところで勝手にサービス残業を美徳に仕立て上げてくれます。
貴方は何も手を汚さずにです。
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今、サービス残業をしている皆さん。
これが、「サービス残業」の構造であり「サービス残業させる者」の理屈です。
これに真面目に付き合ったり、自分を責めたりする必要があるとまだ思いますか?
どう対応すればいいかは、この文書の中に書いてあると思います。
これは、【サービス残業させたい上司(に対抗するため)のマニュアル】です。