ジェファーソンからの手紙

就業・働き方改革、キャリア、組織マネジメント、IT、政治、社会、文化などについて徒然に書きます

【就職活動の簡易考察】問題なのは祈られること?

 

「お祈りメール」とは、主に新卒採用に係る日本の就職活動で良くみられる企業側の不採用通知の文面で、 
【残念ながらご期待に添えない結果になりました。何卒、ご容赦いただければ幸甚に存じます。末筆になりましたが、貴殿のこれからの一層のご活躍をお祈り申し上げます。】 
・・のように、最後が「お祈り申し上げます」で終わる文章のことです。 

殆どの企業が不採用通知をこの形式で送付することから、不採用になることを「お祈りメール貰う」と言うフレーズが就職活動をする学生の間で広まったことが由来。 

 

 

*------- 

「お祈りメールを送る企業担当者は悪」というのが世の中当然になっています。

でも、「企業人事担当者」という世界共通の敵のような悪の秘密結社はありません。 

文面が問題なんです? 
それとも「不採用」そのものが問題なんです? 

元々は「お祈りメール」は「不採用」の隠語でしかありません。 
不況の時代、多くの「お祈りメール」を貰う学生が多いため共通文脈として出てきた言葉です。 

政治家の理屈や官僚の理屈を良く「永田町の論理」「霞ヶ関の論理」と言いますが、問題なのは地名じゃないのと同じです。 

*------- 
「いやいや、祈ることが問題なんだ」「あんな心の篭ってないテンプレート文言貰えば腹が立つ」 
そういう人も確かにいるでしょう。 
気持ちはわかります。 

私からしたら、あれは時候の挨拶などと同じで、ある程度定型化した文言なのは致し方ないと思います。 
理想系は人それぞれに心の篭った言葉を書くのがいいんでしょうけど、ある程度以上の企業の場合書類選考からはじめたら何百とか何千、でかい会社の場合一万人近くもの不採用者がいます。 
同じ時期に全国の大学生が一斉に活動をはじめ、しかもネットから簡易にエントリーできてしまうので数も膨れます。 

それでも、「祈られるのが嫌だ」言う人はいるでしょう。 
では、どういう不採用通知がいいのか考えて見ましょう。 

*------- 
【パターン1】 
■そもそも、通知しない 

「選考合格者のみ、次のステップの案内を2週間以内に送付いたします」 

・・・これが一番シンプルですね。 
無言を以って回答する。経費節約にもなります。 
そもそも、企業側からしたら「来てほしい人」に通知したいわけで、どうでもいい人に文面連絡する義務はございません。 
「連絡が来ないこと」が不採用の連絡だと言うのも立派な通知方法です。 

でも、最近こういう会社はありませんね。 
そりゃ、待たせるのも失礼ですし、万が一何かのトラブルで合格者に連絡が行かないこともありますし、何よりこういう対応されたら学生も気分を害します。 
学生も将来の顧客候補です。 
こういう対応をする会社、私の就職活動時代は名の知れたコンサル会社でもありましたがさすがに最近は見ませんね。気遣いは大事です 

【パターン2】 
■伝達事項はシンプルに 

大きいフォントでただ一言

「不採用」 
これで良いのではないですか? 

必要な事項は書いてます。余計なことも書いていません。 
そもそも、企業側からしたら、その後学生が頑張ろうが良い結果を出そうが知ったことじゃないという考えもあるでしょうし、採用担当者も学生に祈ることを教義とした宗教を信仰している訳でもないでしょうから一々祈りたくも無いでしょう。 

・・え?こっちも、時間割いて面接に行ったんだ。不採用にしても、もっと言うことがあるだろう? 

そうですか。 

【パターン3】 
■忌憚無く不採用の理由を詳しく書く 

【貴方の話し方は早口かつ声が小さい上に滑舌が悪くおまけに人の目を見て話さないため何を言ってるのか良くわかりませんでした。 
また、話し方だけでなく貴方は人の話を最後まで聞かずに答えたり、早とちりしたまま回答したり、他人の会話に割って入ったりと、話すスタイルにも問題があります。 
細かいことを言えば「ハイハイ」「ですよね~」「~っす」「ていうか~」など、TPOをわきまえない言葉の癖もビジネスマンとして問題です。 
また、会話の受け答えも質問の趣旨を理解しない的外れな回答、論理的整合性が無い持論展開、質問したあとのアクション想定が無い思いつきの質問など、言葉のキャッチボール能力に不安を感じます。 
貴方が話された自己PRや志望動機も論理的整合性、話の脈絡が無いばかりか非常に表面的で薄いと言う感想をを持ちました、その上で当方の質問にすぐ押し黙るのは、いかに思考の裏打ちの無い付け焼刃の話をしたか、又は捏造の話をしたのではないかと言う疑念を拭うことが出来ません。 
以上のコミュニケーション的な問題に加え、貴方の筆記試験内容を見ると基礎的な地頭の良さが欠けていて論理的思考力の欠如が見えて取れます。 
また、貴方の大学の専攻自体も専門性・特別性のない分野ですが、その上で成績表を見ると到底優秀とはいえないばかりか、努力の跡も見て取れません。 
その他、語学や財務・IT等の専門スキルをお持ちではないことも確認できました。 
つまり、貴方は基礎的な地頭の良さやコミュニケーション能力等のコンピテンシー的な要素も無ければ、専門スキルや知識等のスペシャリティーも無く、弊社のメンバーとして迎え入れるべき要素のかけらも見出せませんでしたため不採用とします。】 


え?「もう止めてくれ!傷ついた」・・・? 

おいおい、こんだけ君のために時間を割いて君がなぜ不採用かを説明してくれてるんだぞ? 
明日の糧にしようとは思わないで傷ついた? 
面倒くさいですね・・ 

【パターン4】 
■もっともらしい捻りを加えた、実は適当なメッセージ 

「残念だけど君は不採用だ。でも、僕は君の将来を祈ったりしない。それは、僕みたいなのが祈るのは失礼だからだ。君の器は大きすぎ、君の可能性は輝きすぎて、当社では君を抱えきれないと判断した。君はもっと自由で大きなフィールドで羽ばたくべきだ。きっと君は世界を変える力を持っている。だから、僕は泣く泣く君を不採用にする。それは君のためにも、日本の将来のためにもそのほうがいいからだ。僕と君とは強敵(ライバル)だ。また君とビジネスと言う名の戦場で合間見えることを楽しみにしている。」 

・・・ここのポイントは、これをテンプレ化しちゃうと今度は「楽しみメール」と言われるのでパターンを考えておく必要があります。 
はっきり言って全く無駄な作業の上に膨大な時間がかかります。 
貴方、採用されて人事部配属されたとして、毎日こんなメールをパターン考えて夜中までかけて多くの人相手に作成する仕事したいです? 

そして、私ならこんなメール貰って喜ぶバカを相手にしたくも無いです。 

*------- 
「祈られること」それ自体が問題ではなく、「不採用」が嫌なんじゃないです? 

素直にそこに文句を言うほうがわかるのです。 
不景気の採用縮減に文句を言う方がわかるのです。 

「私が不採用が嫌だ」と言う素直な思いでもいいですし 
「不況のときに新卒採用を極端に縮減して歪な人口ピラミッドを形成して後から人材不足や継承難を嘆く経営ビジョンの無さ」を説くでもいいですし、 
「そもそも新卒採用ウェイトが大きい多様性の無い採用形態」への批判でもいいのです。 

「お祈り」は限りある時間とリソースの中で、なるべく学生の気持ちを傷つけず無難に伝えたいと言う思いから始まったと思います。 
今となっては確かに定型文化してますが、問題の本質は本当にそこですか?