ジェファーソンからの手紙

就業・働き方改革、キャリア、組織マネジメント、IT、政治、社会、文化などについて徒然に書きます

【ネガティブニートの簡易考察】電子の海の短冊と、天の川の向こうのまだ見ぬ人へ

今日は七月七日、七夕の日。 
日本に古くから伝わり、1年に1度、短冊に願いを書くこの習慣、願う権利は誰にでもあります。 

そんな日本の片隅の、とある一人の男性。

もちろん彼にだって願いはあるはずです。 
ちょっと様子を見てみましょう。 

 


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・彼の名は 根籐 陽(ネトウ ヨウ) 
8月8日生まれの35歳、8月の陽ざしのように明るくなるように陽と名付けられたが、別の意味で名は体を表している。 

彼はとあるSNSでは知らぬ者なき有名人。 
とある界隈では『愛国』『保守』として右に出る者無き論客と言われ、別の界隈ではただのアホウヨ呼ばわりされている。 

彼は徹底した中国・韓国・共産党関連のニュースの調査と、まとめサイトから自己責任論ロジックと自民党礼賛ロジックのコピペを駆使し、毎日毎日BOTのように同じようなつぶやきを書き込む。 

ある界隈からは、その発信量の多さを絶賛され、別の界隈からはその毎日毎日同じことを買う姿勢に『壊れかけのRadio』の異名で知られる。 
思春期に少年から大人になれなかったのは確か。 

彼の発信量の多さは、当然ながら彼が自由に使える時間の多さにある。 
いつやるのか?ヒマでしょ? 
そう、暇を持て余すニートである。 

彼は来月36歳。 
勝手に愛する国からもうすぐニートの称号すらはく奪される、どこにでもいるありふれたネトウヨだ。 


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さて、今日もお昼に起きる。 
彼の日課はまずワイドショーチェックから始まる。 
今日も反日マスコミの言動をチェックするために誰にも頼まれておらず1円もGDPに貢献しないお仕事の開始。 

芸人上がりのワイドショーの司会者が何か話している。 

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【・・・というわけで今日は七夕ですが、今の街頭インタビュー、いやあ驚きましたね。 
ほとんどの若者が、今日が何の日か知らないんですねぇ。 

ところでみなさん、七夕の由来ってご存知です? 

こんな昔話があるんですね。 

えー、むかしむかし 
天の神様には、娘がいました。 
娘の名前は織姫といって、機織りが上手な働き者でした。 

しかし ひとりぼっちだったので、神様は天の川の向こう岸にいる彦星と結婚することを許しました。 

織姫も彦星も、最初はよく働きましたが、結婚させたら怠けてしまって、働かなくなってしまいました。 

そんな二人を見て天の神様は怒りました。 
罰として、二人を天の川の両岸に離ればなれにしまいました。 

織姫は悲しんでしまったので、天の神様は一年に一度7月7日だけ会うことを許しました。 

…という昔話があったんですね。 

で、ここから織姫にあやかって、昔の人は7月7日にお裁縫が上手になりたというお願いをしていたんですが、 
これがお裁縫だけじゃなくて、「字が上手になりたい」といったこともお願いするようになりって、今では、上手になりたいことを短冊に書いて、笹に飾るようになったというわけですね。 

でもですね、よく考えたら織姫も彦星ってニートの始まりですよね? 
(会場・笑い声) 
え、だってそうでしょう? 
これ、怠けてしまうと罰を与えられるのでちゃんと働きましょうということです。 

だから、これ見ているお母さん、子供によーく言い聞かせて、お子さんがニートにならないようにしつてけくださいね・・】 

・・・彼はテレビを切る。 

PCをつける。 
今日も安倍政権礼賛のためのつぶやきを何個も書かないといけない。 

ニュースチェック。 
ニート比率は平均以下=日本を評価―OECD調査】 
中身は、15~29歳の若年層を対象にしたニート率の調査で、日本のニート率はOECD平均(14.6%)を下回る9.5%となり、7番目に低く、ちなみに彼がいつも馬鹿にして罵声を浴びせる中国は11.2%で11位、韓国は18%で32位というもの。 

そして彼はこの調査の年齢層の対象外。 

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彼も初めからニートだったわけではない。 
情報処理の専門学校を卒業し、システム会社に入社した。 

そこで、労基法違反としか言いようがない過重労働と残業代未払い、そしてパワハラに2年耐え、心と身体を壊して退職し、そこから10数年、ニート生活を送る。 

これでも専門学校のころは『陽ちゃんはパソコンの先生だね』と母親に言われていた。 

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彼は常に徹底した自己責任論を唱える。 
・紛争地域で人質になった日本人ジャーナリストがいれば『自己責任!国家に迷惑かけるな』 
・外国で性犯罪に会う日本人女性がいれば『これだから女は!自分の身は自分で守る!自己責任!』 

・しかし、なぜかブラック企業問題だけは労働者の自己批判とは書かない。 

・・・自分のことは自分で批判できないのです。 

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ニュース記事を見て、彼はつぶやきを書く。 
アベノミクスのおかげで日本のニートはこれだけ少ない。サヨクはまだアベガー・ジミンガーというが民主のころより遥かに景気が良くなった』 
反日サヨクが好きな中国・韓国のひどさは何だ?日本をこのレベルにしたいのか』 

・・・しかし、書き込みボタンを押す前に何かが心の中で引っかかる。 

こう書きなおす。 
『貧国と比べても意味がない。15-29歳だけで見ても意味がない。日本は年齢の高いニートがたくさんいる。無理に働いてもブラック企業ワープア非正規。そして1度辞めたらレールに戻れない。格差社会が出来上がる。ここから目をそらしてこの順位で喜んでも問題解決しない。なんで政治家は選挙でなんで労働問題を真面目に取り組まないんだ?なんでブラック企業対策をしないんだ?!なんで若者だけ見て30代のニート問題を取り上げないんだ!なんとかしてくれ!』 

これは、他人事の自己責任論でもなく、欲求不満の捌け口としての他者叩きでもない、自分の言葉だ。 

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現代において、確かに短冊に願いを書く習慣は無くなりつつあるのかもしれない。 
でも、意識していないだけで、電子の海には毎日SNSという名の短冊に書かれた願いが流れているのかもしれない。 

今日、七月七日は七夕の日。 
願いを書く権利は誰にでもあります。 

あなたは電子の短冊に何を願いますか? 

あなた達の願いの蓄積が、もしかしたらまだ見ぬ誰かの心をほんの少し動かし、 
多くの人のほんの少しの行動が、少しずつ、初めは一滴から、そして小さな川の流れができ、やがて天の川以上の大河となり、社会をよく変えるかもしれません。 

私の願いはそれです。